(あぁ、そう言えば)
まだ慣れない書類仕事と格闘していた綱吉はふとあることを思いだした。
その時は気にもとめなかったことだが、丁度目の前に本人がいることだし、聞いてみようという気になった。
ただの気紛れ。
「ねぇ、リボーン?」
だから、その気紛れがあんな結果を生むなんて、(ボンゴレの超直感をもってしても)思わなかったんだ。

  (聞かなきゃ良かったって後悔するんだ)

「何だ?分からないところでもあったか?」
目の前のソファに座って愛用の銃器を磨いていたリボーンは、綱吉の声にその手を休め、顔を上げた。
(彼にはこの屋敷で二番目に良い部屋を与えたはずだが、何故いつもこの執務室にいるのだろう?)
彼の目の前ではまだ温かい紅茶(ボスである綱吉手ずから入れたものである)の湯気が立ち上っている。
綱吉はゆるく首を振った。
「ううん。分からないところはないよ。ただ、聞いてみたいことがあって」
「?」
リボーンには心当たりはないらしい。
まぁ、聞きたいことは噂で聞いたことだった。
それが根も葉もない噂ならば、彼が心当たりがないのも当たり前だろう。

「なぁ、リボーン。………お前、愛人全部きれいに捨てたって本当か?」

リボーンの動きが完全に止まった。

「………おい。それ、どこで聞いた?」
「?どこって噂で。」
ボンゴレで一番有名なアルコバレーノのヒットマンの噂だ。ファミリー全員(下手すれば使用人達も)が知っているのではないだろうか。
というか、え?
「っ?何、否定しないの!?」
リボーンは居心地が悪そうに少し身じろぎした。そうすると少し年相応に見える。
「……いや、否定するも何も本当のことだ」
「!!!」
驚いた。まさかだ。
「だって愛人。一人や二人じゃなかっただろう?それを全部っ?」
「全部」
そんなことをすればいつ後ろから刺されてもおかしくないとは思ったが、リボーンのことだ。そんな後腐れの悪い女を選ぶことはしないだろう。
にしてもまた、思い切りの良いことをする。
と、一つの可能性を思いつく。そんなことは絶対無いとは思うが、もしそうだとすれば面白い。
にやにや笑いながらからかいの言葉を口にした。
「へぇ〜〜〜。何?本命でも出来た?」

…………ドカッ

問:先程の『ドカッ』は何の音か
答:リボーンがソファの前にあった机を思いっきり蹴った音。

紅茶の入ったティーカップが音を立てて床に落ちる。割れなかったことが不幸中の幸い。
と、そんな場合ではなかった。
「な、なんだよっ。突然!!」
本当に突然だった。愛人の件にふれたときは何ともなかったのに。
ギロッと久々にあの鋭い目で睨まれる。
「……『ダメツナ』。お前、修行し直した方が良いらしいな」

「ひぃっっっっ。た、助けて〜〜〜〜〜ぇっっ」

その日は夜まで、執務室からボスの悲鳴が絶えなかったと言う。

 end

「人の気持ちもわからないようじゃボス失格だっ」

綱吉に「本命はお前だっ」と言いたくても言えないリボ様
BLOGタイトルで御題(5 言わなきゃ良かったって後悔するんだ
(06/12/24)

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