リボーンが珍しく怪我をしてきた。
珍しくというか、俺が知っている10年間で初めて。
左手を銃弾が掠めただけで、大したことはなかったが、怪我をしたこと自体が俺にとって衝撃だった。

  バキューン☆

「終わった〜っ」
部下が追加で持ってきた書類に目を通し終わり、今日の仕事が終了した。
軽く、書類の角を整える。後は再び部下に任せればいい。

「よいしょっと」
やけに大きな椅子(自分の小ささが際だつからあまり綱吉は好きじゃない)から立ちあがる。
薄く開いた後ろの窓から入ってくる夜風が心地良い。

コンコンッと扉がノックされた。
誰かはわかっていたので、「どうぞ」と日本語で声をかける。
「失礼します。十代目」
「ご苦労様。獄寺君、この書類だよね」
はいっと獄寺に何枚かの書類を渡す。
「ええ、ありがとうございます」
獄寺は昔に比べてだいぶ落ち着いたと思う。元からの頭の良さを生かして書類仕事もテキパキとこなす。
ただ、綱吉のこととなると暴走することだけが玉に瑕だが。
「あ、それとリボーンさんがお帰りになったみたいです。もうすぐこちらにいらっしゃるかと」
「わかった。報告ありがと」
にっこりと微笑んだ綱吉に獄寺も微笑み返して部屋から出ていった。

「…で、リボーン。いるんだろ?出てこいよ」
「さすがは我らがボス」
「茶化すなよ」
窓から入ってきたリボーンに綱吉は振り返った。
「で、報告書は?」
「今、一緒に行ったやつらの中の一人に書かせてる。明日の昼までには届くだろ」
今回リボーンと任務についた強面だけど根は優しい青年のことを思い浮かべる。
押し付けられるとしたら彼だろう。苦労しているみたいだ。今度彼が喜びそうなことを考えておこう。
「と言うことは、本題はその手のことかな?」
黒いスーツと対比して余計に白く見える包帯を指さす。
「…あぁ」
「リボーンが怪我をするような任務じゃなかったよね。高々、小さなマフィア一個潰すくらいだろ」
この場合、『小さな』とはボンゴレに比べたらと言う意味で、そこそこ名の知れたところなのだが、綱吉やリボーンにとっては関係ないらしい。
「まさか、情報が間違ってたとかじゃないよね。諜報部の情報通りに圧力かけて、あっちの人数減らしといたはずだけど」
足りなかったかなぁ〜?と綱吉は呟く。
綱吉の話を今までずっと黙って聞いていたリボーンがやっと口を開いた。
「お前、全部知ってるんじゃないのか?」
「知らないよ。リボーンが何かの拍子にキレて、一人で敵のど真ん中に突っ込んでいったことぐらいしか、ね」
十数人で潰す予定のマフィアだった。それをリボーンは一人でやってのけたのだ。
かすり傷一つで帰ってこれたのも、リボーンだからだろう。
間違いなく別の人間だったら死んでいる。
「…十分知ってるじゃねーか」
「俺が知りたいのは、リボーンが一人で敵陣に突っ込んでいったその理由だよ」
一足先に情報を持ってきてくれた部下が、「あんなに感情を露わにしたリボーンさんを俺は見たことがありません」と言っていたくらいだ。
「ただ思いっきり銃をぶっぱなしてみたかっただけだ。バキューン☆って」
「嘘だろ」
大体なんだよ。バキューン☆って。そういうキャラは骸だけで充分だ。
「まあいいけど。で、本当はどうなんだ?」
リボーンは顔を帽子に隠すようにしながら、小さく早口で言った。

「相手のボスが…。そいつがお前の悪口言ったんだよ」

これは、予想外だ。
まさか俺の為だったとは。
顔が一気に赤くなっていくのを感じる。
「ち、違うからな。お前が貶されたってことは、俺の家庭教師の腕が貶されたってことだから、俺が制裁しただけだっ」
リボーンってこんなに解りやすいやつだっただろうか。
俺の為に自分が傷つくことも躊躇わないで怒ったり、照れたり、今日一日でリボーンの新しい一面を色々と見れたみたいだ。

今晩は機嫌が良い。
リボーンが怪我したことを必死に隠蔽した苦労も忘れられそうだ。

 end

10年後リボツナパラレル
相変わらずラブがないですね
書いてく途中でお題を忘れて、バキューン☆の周辺は後から付け足しました
…アホですみません
(06/12/12)

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