「残念だったな。この道は一方通行だ」
しまったっ、リボーンに見つかった。
イタリアの細い路地裏。
ボンゴレボスの綱吉は、部下であるはずのリボーンに退路を絶たれ、窮地に立たされていた。
え、今いったい何をしているのかって?
逃亡さ。
一方通行
綱吉がイタリアにわたってから、二年。
自身は勿論周囲の努力のおかげで、綱吉は早くもボンゴレボスとしての地位を確実のものとしていた。
なにせ、群れることが嫌いな雲雀やマフィア嫌いの骸まで手伝ったのだ。
中でも、アルコバレーノトップの実力を持つリボーンが綱吉の部下となることを宣言した影響は大きい。
あのリボーンの手綱を握る者として、綱吉の裏社会での知名度は飛躍的にあがった。
九代目が高齢なこともあり、スムーズに引き継ぎが行われることとなったわけだが、ここで一つ問題がおこる。
綱吉は、書類仕事が苦手だった。
今でこそリボーンに誉められるくらいに、戦闘も勉学も上達したが、中学までのダメツナ癖はなかなか抜けない。
素晴らしい手腕で仕事をこなしていたかと思えば、いきなり仕事を放り出して逃げ出す。
部下たちが『我らが十代目は素晴らしい方だ』と綱吉を尊敬していられるのは、側近たちの知られざる苦労があるからだ。
綱吉を連れ戻すことはリボーンの仕事の一つとなりつつある。
「ダメツナ。仕事に戻れ」
「えーっ」
心底嫌そうな顔をした綱吉に、リボーンの顔がひきつる。
「『えーっ』じゃねぇ。獄寺が泣きわめいてたぞ」
心配性の右腕は、綱吉が逃げ出す度に暴走しているらしい。
今頃は「今助けに行きます、十代目〜!」とかなんとか騒いで必死に周囲に止められているのだろう。
「あ〜」
ありありとその光景が思い浮かぶ。
「で、でも、俺はまだ帰らないからねっ」
まだ逃げ出してから半日も経っていないのだ。ここで捕まっては堪らない。
綱吉は再び逃亡を続けようと、クルッとリボーンに背を向けて走り出した。
その時。
「赤ん坊っ。綱吉が見つかったって本当?」
綱吉の進路に雲雀が駆け込んできた。
「わ、ヒバリさんっ」
思いっきり走り出していた綱吉が止まれるはずもなく。
雲雀の胸に飛び込むこととなった。
「ワオ!綱吉。積極的だね」
雲雀にしっかりと抱きしめられてぐったりしている綱吉を見て、リボーンは笑った。
「俺がそう簡単に逃がすわけねぇだろ」
「うぅ…。いつヒバリさん呼んだんだよ」
「お前を見つけてすぐだ」
「悠長に話してたのは足止めの為か〜」
雲雀を見上げるが、この人がそう簡単に放してくれるはずがない。
「じゃあ、綱吉。帰ろうか」
…どことなく嬉しそうだし。
今回の逃亡はここでおしまいかぁ。
「は〜い」
自分を待っているであろう書類の山と右腕をどうしようか。
リボーンと雲雀に挟まれて歩きながら、綱吉は頭を悩ませた。
end
ボンゴレの日常編
側近たちは捜索部隊と隠蔽部隊、獄寺制止部隊に分かれてます
なんか書く度綱吉が哀れ
綱吉に対する愛はあるのになぁ
(06/12/12)
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