『援護部隊はどうしたっっ』
『ダメですっ、既に全滅させられました!』
数百人はいた援護部隊が全滅とは普段であれば到底信じられないことであるが、
『くそっ。奴らなんて強さだ』
今さっきまで戦っていた襲撃者の強さを考えると、それが真実であることは間違いなかった。
ヒーローは、舞台の幕を開ける
襲撃は少人数で行われた。
おそらく十数人程度だろう。
こちらは千人以上。潰すことなど簡単だと思っていた。
しかし、実際は違っていて、
気づけばファミリーは壊滅状態。
『どうなってるんだっ』
今は、なんとか逃げ出したボスを含む幹部たち九人だけがここにいる。
目の前には使われていない工場が続いている。崩れたコンクリートで足場が悪く、両側の壁で視界は狭か
った。
『この先に行けば港がある』
そこまで逃げ切れば…。
前方に光が見えた。あと少しで壁が途切れる。
九人の顔に希望の色が見えた。
『やっとこれで逃げ切れっ……なっ!』
信じられなかった。信じたくなかった。
開けたところに確かに港はあった。小さいが、船も停まっている。
あまり使われていないのか、近くの壁が崩れたらしい大きなコンクリートの塊がそこかしこに散らばっていた
。
そして、
太陽を背にしている為、顔は見えないが、
その塊に座ってこちらを向いている人影が五つ。
『こんにちは。ボス』
真ん中に座っている一番小さな影が、流暢なイタリア語で挨拶をする。
『お、お前たちはっ…』
ボスの脅えた声に右端の槍を持った影が小さく笑った。
『ボンゴレ、ですよ』
『あれ?心当たりないのか?』
右二番目の刀を背負った影がこの場にそぐわない明るさで聞いてきた。
心当たりはあった。
ボンゴレに刃向かうことは則ち死であること。
それはこの世界に入った時から解っていたはずなのに…
『てめぇら、ボンゴレ統治区内で麻薬を流した罪は重いぜ』
あぁ、何でこんなことをしてしまったのだろう?
ダイナマイトだろうか、細長いものを持った左二番目の影の断罪の言葉が突き刺さる。
『ねぇ。そろそろ行かないとパーティーに遅れるよ。…もう咬み殺しても良いでしょ?』
左端の影が待ちきれないと、得物のトンファーを打ち鳴らす。
音が背中側の壁に跳ね返って響いた。
もう、命も終わりなんだろうか…。
いや、まだ希望はあった。
ダメですよ、まだ。
『もうちょっと待っててくださいね、後少しです。それまでお話ししましょう』
真ん中の影の言葉に九人は命が救われる可能性を感じた。
が。
カチャッ
『ひぃっ』
ボスの後頭部に冷たく硬いものが押し当てられる。
『待つ必要はねぇぞ。もう役者は全員揃った』
子供の声だ。
気配などまるでない子供。
聞いたことがある。つい数年前、ボンゴレファミリーに入った最強の子供たちがいると。
確か彼らの名前は、
『あ、アルコバレーノ』
『正解』
(多分わざとだろう)ニヤリと笑った気配がした。
座っていた五人が立ち上がる。それにアルコバレーノも加わった。
これが、今回の役者(ヒーロー)たち。
まさか!
『まさか今回の襲撃はたったの六人で!!?』
誰も答えなかった。沈黙は、肯定。
『光栄に思ってほしいですね。こんな小さなマフィア、誰か一人で充分ですよ』
槍を持った影が歩み出して、廃墟の作る暗がりに入る。
顔が見えた。
『そ〜だぜ、ラッキーだよ。滅多にないんだ、こんなこと』
次に刀の影が、
『ボンゴレ幹部がこんなに揃うことは殆どねぇしな』
大量のダイナマイトを手の上で弄ぶ影が、
『それだけじゃないよ』
トンファーを構える影が、
『あぁ。直接手を下すなんて一体どれくらいぶりだろうな?』
そして、銃を構えたアルコバレーノが、
次々と暗がりへ入り、顔を見せた。
残るは、真ん中の影のみ。
『さぁね?始めるよ』
遂に最後の影が踏み出した。
舞台の幕が開く。
『『『『『了解。我らが十代目』』』』』
全てが理解できた。
こんなにあっさりとファミリーが潰されてしまったのも。
自分たちがラッキーだと言うことも。
自分たちがもう間もなく死ぬ運命にあることも。
ボンゴレファミリー十代目がこの舞台の主役ならば、それが全ての理由だ。
九人が最後に見たのは、イタリアのエメラルドグリーンの海と、駆け出した役者たちの姿だった。
end
ツッコミどころが沢山あります
書いてて自分で何書いてるのかわからなくなったところも多数
骸の武器…あれって槍で良いんですよね?
此のサイトでは初の御題以外な文でした
(06/12/14)
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