あぁ僕は、キミがいないとダメなんだ。
キミ依存症
綱吉の姿をここ数日見かけなかった。
いつもは騒動の真ん中にいるから、すぐに見つかるのに。
取り巻きたちは学校に来ていた。
彼だけがいなかった。
「委員長。宜しいですか?」
応接室のドアごしに声が聞こえる。
自分らしくもない。どうも注意力散漫だ。
いつもなら人が近くに来たら、すぐに気が付くのに。
相当、重傷だね。
「入っていいよ」
「失礼します。委員長、明日の…」
綱吉がいない理由は既に聞いていた。
ボンゴレ九代目に会いにイタリアまで行っているのだそうだ。
一週間以上そちらに滞在するらしいから、来週まで学校に来ることはない。
そのことは頭では理解しているつもりだ。
が、
教室、屋上、廊下、彼の居そうな所全てで、
無意識に彼を探している自分がいる。
自分でも呆れてしまうほどだった。こんなに依存しているとは…。
「い…長、委員長。どうかしましたか?」
「あ。あぁ、ちょっと考えごとをしててね。いいよ、続けて」
意識が戻る。
はぁ。と、訝しげな顔をしながらも委員(ひとりひとりの見分けはついていない)は明日の委員会についての話を続ける。
限界は近かった。
あれから一週間。
予定では綱吉の帰ってくる日だ。
明日には学校にも来るのだろう。
そう思うとそれだけで地を這っていた気分が少し浮上した。
応接室に夕日の光が差し込む。
暖かく優しいオレンジ色を見て、綱吉を思った。
バタバタバタ…。
廊下を走る音がする。
…珍しいね。
大抵の並盛生は雲雀に遠慮して、応接室の周辺はできる限り静かに通るか或いは近づかない。
応接室はいつも静かだった。
バタバタバタ…
まだ音は続いていて、
こちらに近づいてきた。
バタバタ…キュッ
足音が上履きのこすれる音を最後に完全に止まる。
そして、それは、
あろうことかこの応接室の前。
そして、息もつかないうちにドアが開かれる。
盛大な音を立てて開いたドアの向こうには、
「…つ、なよし?」
会いたい。とずっと願っていた綱吉。
その彼が、息を弾ませて立っていた。
はぁっはぁっ…。
よっぽど急いできたのか、とてもじゃないが何かを喋れる様子ではない。
雲雀は綱吉の手を引いてソファに座らせた。
ついでに備え付けの冷蔵庫から麦茶も出してやる。
綱吉は差し出された麦茶を一気に飲み干した。
「どうしたんだい、綱吉?何かあったの?」
帰国して早々、何か事件でもあたのかと思った。
運動も苦手な綱吉がこんなに全力で走ってきたものだから。
「はぁ〜〜〜〜。…どうしたのか聞きたいのはこっちですよ。雲雀さん」
「?」
「俺イタリアから戻ってきて家に帰ろうとしたんですよ。そしたら、家の前が風紀委員の人たちでいっぱいで…
聞けばみんな泣きながら『委員長が、委員長が…』って言うじゃないですか。
雲雀さんに何かあったんじゃないかって俺心配したんですよ?」
それで走ってここまで来たのだと。
「………」
嬉しかった。
綱吉が自分のことを心配してくれたことが。
今なら、ずっと綱吉がいない間考えていたことを言っても良いような気がした。
「好きだよ。綱吉」
だから僕から離れないでね。
「はい。って…………えぇ!!?雲雀さん、今なんてっ?」
「何、綱吉聞こえなかったの?だから、君が…」
「い、いいですっ!もう言わないで下さい〜っ!!」
綱吉の顔が真っ赤に染まるのを見て、雲雀は笑った。
end
おぉっ。初めてまともにCP書けました。
おまけつき、このすぐ後のお話です。
では、どうぞ。
→おまけ
(06/12/14)
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